教育天声人語
私学が優位に立てるポイント

  10月中旬、東京私立中学高等学校協会の私学経営研究会で、理事長・校長・広報の先生方に向
 けて講演をした。「これからの理事長、これからの校長」では大変おこがましいお話をした。ここ
 では広報担当者にお話しした中から1つを取り上げたい。
  私(安田)は通勤に東京メトロ南北線を利用している。途中に白金台という駅があり、たまに降
 りる。ご存知の方も多いと思うが、ここには「八芳園」という結婚式場がある。以前、駅の構内に
 「結婚まで徒歩3分」という広告があり、「式場」を入れていないところにこのコピーのすごさを感
 じた。最近目にしたのが、「八芳園は生涯式場です」というコピー。結婚式だけでなく、誕生日、
 還暦等のお祝い、子ども・孫の七五三・成人式、法事……生涯にわたってお付き合いください、
 というメッセージだ。
  これを目にしたとき、私学のスタンスだと感じた。これこそ、公立に対して優位に立てる武器
 ではないだろうか。すでに、成人の日に多くの卒業生が帰ってくる学校、ホームカミングデーを
 設けている学校がある。また就活中の大学生に志望企業に勤める先輩を紹介している学校がある。
 さすがに婚活の支援までしている学校はないかもしれないが、いずれにしても「わが校は生涯に
 わたって卒業生をサポートします」というメッセージは、受験生の保護者向けに有力な広報にな
 るのではないだろうか。。
  これから日本経済は人口減もあり否応なく縮小していく。自治体からの助成金も期待できない。
 授業料アップも難しいだろう。そうなれば、これからの私学は、卒業生からの寄付の多寡が経営
 を大きく左右するようになるかもしれない。
  そのためにも、卒業生を大切にしていただきたい。卒業生に情報発信し、卒業生を「広報マン」
 「広報ウーマン」にできるかどうか。ここでも広報担当者の力量が問われる。

「ビジョナリー」2015年11月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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