教育天声人語
「内側」にあるものが読ませる


  朝日新聞の文化・文芸欄に「語る―人生の贈りもの」という連載がある。今は劇作家永
 井愛さんを取り上げていて、11 月20 日までで8 回ほど続いている。ご自分で書いている
 のではなく、編集委員が話を聴いてまとめている。いつもほとんど素通りしているのだが
  永井さんは劇団のうだつが上がらない女優だった。舞台以外の仕事が山ほどある。片付
 けや掃除の日、皆が顔を出さない時にも決まって見る姿があった。それがのちの脚本家大
 石静さん。2 人だけの劇団「二兎社」を立ち上げるが、人間としての信頼はその姿
 から生まれたと語っている。このことはそのずっと前に大石さんのエッセイでも読
 んでいた。またある回では、渡辺えりさん、如月小春さん(劇作家・演出家)との
 座談会の話があった。如月さんは私が雑誌の編集者だった時に「卒業生の母校訪問
 という記事で成蹊にご一緒した。当時、さまざまな分野で活躍され、時代の寵児
 であった(2000 年、44 歳で亡くなる)。この「卒業生の母校訪問」は私にとって私
 学にかかわる仕事のスタートでもある。記事に引っかかるのは、こちら側に何かし
 ら関連するものがある時だといつも感じている。
  だから受験生の保護者に「いきなりHPや学校案内で探すのではなく、お子さん
 に送ってほしい人生、お子さんの資質、キャラクターなどを先に考えて」と語るの
 も、こちら側に人生観、価値観があってこそ、各学校の教育のスタンスで引っかか
 るものに気がつくと思うからである。

「ビジョナリー」2020年12月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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