教育天声人語
家庭科の教科書は大きく変わっていた

  ある学校の紹介記事で、「調理・被服の実習室がそれぞれ2つに家庭科総合教室と家庭科だけ
 で5教室、しかもクラスを2分割して少人数で教えている」と書いたら、校長から「最近の家庭科
 は昔のお裁縫・お割烹のような花嫁修業的な教科ではありません。総合教科といってもよいと存
 じます。実習からレポート作成等、生徒にとっては力を入れる対象です」というメールをいただ
 いた。
  で、知り合いの広報部長に家庭科の先生がいたので、「家庭科の教科書で余っているものがあっ
 たら、1冊送ってくれませんか」と頼んだら、自分が編修著作者に入っている平成29〜32年度用
 の新しいものをすぐに送ってくれた。開いてみて驚いた。調理・被服の部分は38%くらいしかな
 い。「高齢者の生活と福祉」「共生社会における地域や家族」「消費者市民への道」「生涯の生活設計」
 といった章が並んでいる。パラパラ見ると、「男女間賃金格差の国際比較」「雇用形態別賃金」「学
 歴別賃金」といったグラフが掲載されている。その先生とのやり取りの中で、「社会科と重なる部
 分もありますが、社会科との違いは、世の中で起こっている事柄を現象として俯瞰的に見るので
 はなく、当事者である生活者の視点で捉えていくのが家庭科です」と教わった。
  教科横断型授業にピッタリだなと思いながら他校の資料を見ていたら、すでにやっているとこ
 ろがあった。「特別教養講座」で、『江戸の食文化』『とうふのひみつ』は家庭科と他の教科が協力
 して行っていた。
  今回の経験から、担当教科以外の教科書を見ることをお勧めしたい。自分が習った頃とはずい
 ぶん違っているはずだ。そしてそこから、他教科との交流の糸口が発見でき、さらには将来の合
 教科・合科目問題への対策も生まれてくるはずだ。

「ビジョナリー」2016年10月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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