教育天声人語
「待てない」保護者から学ぶこと

  Aという私学の先生からの紹介で、Bという私学に通う中2男子生徒の保護者の相談を受けた。
 なぜこうした関係になっているかというと、この生徒は1年前、A中学、B中学、C中学の3校を
 受験。当初の本人の第一志望はC中学で、A中学、B中学はともに挑戦校だった。C中学はスン
 ナリ合格、A中学は1回目に落ちて2回目で合格、B中学は2回落ちて、繰り上げで合格。結果的
 に3校とも合格となって、塾の先生に相談したところ、B中学を勧められてB中学に入学したと
 いう経緯だった。
  ところがB中学に入学させたところ、本人が学校になじめない、保護者も学校の教育方針に好
 感が持てないということで、受験の過程で親しくなったA中学の先生に編入できないか相談した
 ということであった。A中学の先生は当然「それは無理」と話した。
  それでも何か方策はないか、ということで、私にお鉢が回ってきた。話をしてみると
  ・私以外にもあちこち相談している。
  ・入学先を決めるときもそうだが、自分で決められず人の意見を求めている。
  ・B中学について、子どもより先にネガティブな意見を吐いている。
  実はこうした保護者は案外多い。「わが子に少しでも良い環境を与えたいと、非常に熱心」
 「が、自分では決められない」「学校に問題があるという見方をする」……。
  子どもにはある程度適応力があるのに、それが育つのを待てず、不具合が見つかるとすぐ環境
 を変えてあげようと動いてしまう。
  今回、相談に乗りながら感じたことは、子育ての基本姿勢につながることだなということだ。
 学校でも塾でも、学習面でも生活面でもそうではないだろうか。もう少し本人の自覚、意欲、エ
 ネルギーが湧くのを待ってみることが、子どもを育てるには必要なことではないだろうか。

「ビジョナリー」2013年7月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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