教育天声人語
「何もない空き地」「することが決まっていない時間」

  「ビジョナリー」の塾説訪問記を読み、保護者の「学校説明会リポート」を読み、自分自身でも
 塾説に足を運んでいる。かなりの数の説明会をのぞいていることになる。
  そうした中で気づくのは、家庭での学習習慣をつけるために、「学習記録ノート」をつけさせ、
 毎日何をどのくらいやったか記録させる学校が増えているということ。先生の方もそれについ
 て毎日コメントするのであるから、大変な労力だ。
 「面倒見がいい」学校が好まれるという状況の下、こうした「手取り足取り」が加速する一方だ。
 つい最近も、受験時に他校の説明会で「学習記録ノート」の試みを知っていた保護者が、 学校に
 「うちでもやってほしい」と要求してきたという話を聞いた。また、どこの学校でも、最近の受験
 相談の質問には、平日の補習・講習、長期休みの講習などに関する質問が多くなっている。
  私のところにも、合格発表直後に、「入学したらどこの塾に通わせたらいいか」という電話が
 かかってくることがある。常に何らかの形でわが子を勉強する場に所属させていないと不安と
 いう保護者が多くなっている。小さいころからそうだ。まだそれほど興味を示していないのに、
 すぐにお稽古事に通わせようとする。実際今の子は多忙である。
  最近、犬の散歩でよく公園に行くが、子どもの遊んでいる姿はまず見ない。ふと思うのだが、
 1度遊べばわかってしまう既製の遊具が設置されているから面白くないのではないだろうか。
 「何もない空き地」「することが決まっていない時間」が、遊び方の工夫をし、オタクにもなれる
 「想像力」「創造力」を育てるのだと思う。
  中高一貫校なら中3・高1、高校単独校なら高2くらいは、自分でどう使うか決める「空き地」
 「時間」があってもいいのではないだろうか。

「ビジョナリー」2009年11月号掲載     |もくじ前に戻る次に進む

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