日本女子大学
附属中学校・高等学校
神奈川県 女子校

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 キャンパスは、さまざまな緑の色が重なる丘陵地にありました。「森の中の学校」と呼ばれているように、校舎は広い森に囲まれていました。はじめに、授業公開があり、参加しました。中1のクラスでは、数学・国語・英語・英会話・音楽などの授業が行われていました。各教室の後ろに自己紹介カードが貼り出されているのが目にとまりました。名前・ニックネーム・好きな食べ物・趣味・クラブ活動・・・などが手描きされていて、入学したての生徒同士の交流もスムーズな様子。廊下には、「言葉で伝えよう! 名前の由来」が貼られ、教室の白板脇には、生徒の手による「クラス目標」の短冊も・・・。生徒のプレゼンテーション能力が、入学早々発揮されていました。感心しながら、説明会へ。

 はじめに、「国際平和を願い、自ら行動する力を育む教育」と題して、校長の挨拶がありました。

  • 日経新聞に、附属中学が共学化を検討しているかのような記事があったが、そんなことはありません。共学化は全く検討していません。当惑している。今後とも本校は女子校の使命を果たしていく。リーダーシップをもつ女性の育成を大事にしていく。
  • 創立者・成瀬仁蔵による建学の精神のもと、これまで平和思想と国際的視野を持った多くの卒業生を送り出してきた。国際理解教育といえば、海外語学研修や海外留学・修学旅行などが一般に実施されている。本校でも夏休みに、希望者はニュージーランドでの語学研修を行うが、そうしたことに留まることなく、国際人としての意識を養うことを重視している。文科省の要請により、アフガニスタンの女子教育指導者育成にも協力している。
  • 国際理解教育の具体的取り組みを5項目挙げる。(1)中学では、さまざまな教科の授業の中で、国際的視野を拡げる。留学生を招いて小グループでのディスカッションも。高校では、世界がいかに有機的につながっているかを実感させ、多様な価値観を育む。今年、現代文では村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチ(本年2月)を教材に取り上げる。(2)生徒全員が参加する式典において講演会を行っている。創立記念日の講演会テーマは、今年は「国際協力とは何か〜アフガニスタンで学んだこと」だった。このように、授業とは別に生徒の意識を高める機会をつくっている。(3)実践的平和教育として、昨夏、附属の大学生から小学生まで参加して小笠原で合宿した。住民から戦争体験を聞き、将来に向けての課題を知った。(4)毎年12月に学園平和集会があり、平和を考える行為を主体的に行うことの大切さを認識する。(5)アフガニスタンから高校生2名を招いた。双方の生徒が、互いの文化について理解を深めた。国境を越えた交流の大切さを認識。
     生徒たちは、平和について考えている。やがて大学に進学したとき、専門分野を通じて世界の平和のために行動でき、社会に出て長い人生を充実させていくことを期待している。
  • 本校では、「待つ」を大切に指導している。自信のなかった生徒が、大学へ進学後、大きく伸びたケースも。長い人生を考えて、この「待つ」を大事にしている。急ぐことはしない。遠い将来を視野に入れて指導している。このことは具体的数字で表すことは困難だが、確実に成果は上がっていると自負している。

 次に、「本校のプレゼンテーション能力を育む教育」と題して、情報科の先生より話が ありました。

  • 本校は行事が多く、プレゼンテーションの機会が多い学校である。さまざまな場で発表する機会が多いから、自然と発表する力、まとめる力が育まれる。さまざまな行事は生徒の自治によって進められている。
  • 授業でも、プレゼンの基礎を育む。中学では、国語・英語の授業でスピーチ、ディベートの能力を高める。ホームルームでの話し合いや読書会での発表も重視している。高校では、実りあるものになるよう各教科で連携している。理科では、実験・データ解析・理論の結びつけをやり、レポートにまとめたりしている。
  • プレゼンテーションに関する授業について。良い発表を行うためには、良い研究がないとできない。まず「調査」、そして「研究」、「レポート作成」。レポート作成も発表を意識させながら書かせる。次に「発表」。発表で終わるのではなく、友人たちの感想をフィードバックしている。みんなで発表内容を共有して、そのあと議論して高め合う。
  • 調べ学習では、「疑問を持とう」と言っている。疑問が生じるとまた調査する。これを繰り返し、レポートにまとめる。そのレポートを基にプレゼンテーション。みんなで考え、感想を述べ合う。

私の感想

 中1の国語授業をのぞいたときのこと。一人の生徒が立っていました。どうやら「道」という詩を読んでの感想を求められていたように思います。沈黙が流れていました。先生も温かなまなざしで生徒の言葉を待っているようでした。しばらくして先生は、ヒントに詩の内容を少し振り返りました。黙って考えていた生徒はようやく口を開きました。「子どものほうが道を歩きながら楽しさを感じている」みたいなことを答えました。先生は「そうだよね」と受け止めながら、子どもは道を歩きながらいろんな楽しみを見つけるが、大人は目的地へまっすぐ歩くだけ……。子どもと大人の違いや、「道=人生」と捉えることができることを解説した授業でした。あとで説明会のときに校長から、本校では「待つ」を大切に指導しているとの話があったとき、「このことだな」と思い起こしたものです。授業でしっかり実践されていました。
 中1の音楽では、ヴァイオリンの授業中。左手でのヴァイオリンの持ち方を習っていました。中学の音楽ではヴァイオリンが必修のようです。
 日本女子大附属は、特色ある学校ですね。

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