カリタス女子中学高等学校 神奈川県 女子校

▲学校ホームページ(クリックで表示)

 最初に、校長の「挨拶ならびに本校の教育方針について」と題する話から始まりました。

  • 4月より新任になったが、前校長のもとで副校長を務めていた。振り返ると、本校の変革の時期だった。2006年に新しい校舎を建設、教科教室型運営方式を導入した。2/1午後入試を3年続け、2回入試から3回入試へ変更、2/1午前入試へ移行、昨年は授業の基本を50分6コマから45分7コマに変えた。実にたくさんの改革を続けてきた。こうした改革を評価していただけたと思う。今後、私の第1の課題は、改革の歩みを止めないことと自覚している。
  • 新しい校舎での教育は4年目に入り、来年、創立50周年の節目を迎える。この節目を機に、理念に基づいた教育を再確認していきたい。50周年の節目を控えて、アンケートを実施する予定である。「かかわりの再構築」をしたい。現代社会は経済を中心とした競争原理が進み、結果や成果が求められ、生きにくいところに追いやられている人々が増えている。人と人との温かいかかわりが失われつつあると感じる。人と人とのかかわりを重視したい。そのことを子どもたちに伝えていきたい。
  • 目につきやすいところは注目されやすい。たとえば、新しい校舎、進学実績、教科書など。本来、目に映りにくいところである生徒と生徒の人間関係、教員と生徒の信頼関係、そういうところに長所があった。目につく改革の方が目立ちすぎてしまった。目に映りにくい面をもっと意識していきたい。ささやかだが、4月から、朝、校門で子どもたちを出迎えている。副校長も一緒に。子どもの目を見ながら挨拶すると、いろいろなことが伝わってくる。この子は挨拶してくれないけれど何か問題を抱えていて出来ないのでは……とか。子ども達の挨拶の声が大きくなってきた。駅ですれ違っても、自然と挨拶してくれる。カリタスらしいところが、もっと育ってほしいと願っている。
  • カリタスとは、ラテン語で「慈しみ・愛」を意味する。神様は私たち全ての人を分け隔てなく愛してくださる。安心していい。したがって、他の人も大切にしなくてはならない。自分と合わなくても、理性的に接しなければならない。具体的に、「四つの心」を身につけてほしいと呼びかけてきた。「祈る心」「学ぶ心」「交わる心」「奉仕する心」である。因みに「学ぶ心」「交わる心」「奉仕する心」は、“かかわり”を重視した内容である。
     今、「生きる力」が高く評価されるが、本校ではそれに加えて「生かされている力」「生かす力」も大切にしたい。
  • 本校の取り組みについてだが、カトリック教育である。それはイコール、人間教育でもある。狭く考えると、祈る教育と奉仕する教育である。カリタスの1日は「朝の祈り」から始まる。人間教育のなかで最も大きな力を発揮しているのは朝の祈りではないかと思っている。また、週1時間、宗教の時間がある。本校は奉仕活動が特に盛んである。
  • 校舎を建て直すときに考えたことがある。教育理念をいかに具現化するかである。「四つの心」のうち、「学ぶ心」「交わる心」に関連することだ。その結果、「教科教室型運営方式」にした。授業を受ける際、教科の教室へ生徒が移動していく。行った先の教科ゾーンでは教科の雰囲気を感じることになる。出向くことで、生徒自らが授業に積極的に参加する姿勢を育むことがねらいだ。さらに、自律した学びの姿勢をつくるために、ノーチャイム制にした。時間の管理は自分でする。電子掲示板も導入した。必要な情報は電子掲示板を使って流す。生徒は必要な情報を自分でチェックする。
     ほかにも工夫をしている。たくさんの交わりの場、出会いの場を設けた。他学年とも出会えるように、挨拶を交わせるように。「心の交流プログラム」も実施している。スクールカウンセラーと協力して、人間関係の考え方やスキルを身につけさせる。礼法教育では「自分に厳しく、人にやさしく」「自律と思いやり」を伝えていきたい。

 次に、入試委員長より「本校の教育の特色」「入試結果と2010年度入試について」と題して説明がありました。教育の特色のポイントだけを記します。

  • 教育の特色は以下の4つである。(1)カトリック教育。(2)2つの外国語教育。本校では英語とフランス語が必修である。本校は、カナダ・ケベック州のシスターが創立した学校であり、カナダの公用語である英語とフランス語の教育に力を入れてきた。(3)理数教育。論理的思考力と科学的知識を育成するために、モチベーションを上げ、進学のサポートをする。(4)書かせるカリタス。カリタスは書かせることにこだわっている。地道なことが受験に結びつく。大学に入った後も役立つ。
  • 教科教室型運営方式について。生徒は登校すると、HRの部屋に向かう。たとえば1年1組は社会科の教室を使う。教室につながって「ホームベース」と呼ぶ部屋がもう1つあり、そこで上履きに履き替え、荷物はロッカーに。授業に入ると、社会科の教室は社会科を学ぶ生徒が利用する。このように、自分のホームベースと学習の部屋を区別している。

私の感想

 考え抜いた末、生徒にとって良いことは、たとえ他に例はなくても実現する実行力の高さをカリタスに感じます。それは、学校を取り巻く環境というか生徒を取り巻く時代環境の変化を敏感に感じ取り、より良い教育へ改革していこうとする強い意志と言えるかもしれません。説明会終了後に校内見学したのですが、学校のメッセージは明確に伝わってきます。
 学校の中心に図書館があり、ちょうど、あるクラスが「調べ学習」の最中でした。一人の生徒が図書館に常設されているパソコンと向き合っていました。ちらっとのぞくと、ポンペイ遺跡の埋もれた人物の石膏像を画像に取り込み、キーボードをスピーディに叩いて文章を作成中でした。生徒の関心の方向やら、「書かせるカリタス」の実践ぶりが見えて、興味深かったですね。

(c)安田教育研究所 無断複製、転載を禁ず