教育春秋
狭い意味での有能
 私のところ(安田教育研究所)は港区の六本木一丁目というところにある。通勤には東京メトロ南北線を利用している。朝晩、車内で英字新聞や英文雑誌、洋書を読んでいる女性の姿が多い路線だ。
 先日、六本木一丁目の駅にほど近いレストランにランチに入った。案内された席の隣には若い女性の2人組が先客としていた。オーダーが終わってすぐ、持って行った本を取り出して読み始めた。ところが、隣の席の会話の声が大きく、気になって集中できない。しかたなく本を閉じた。

 英文のリポートらしきものを手に、それを読みながら(実に流暢な英語だった)、相手とは日本語でやり取りしている。英語も日本語もものすごいスピードで、声も大きく迫力がある。いかにもきれる有能な女性といった感じだった。
 が、時折口から出てくる言葉に唖然としてしまった。「こいつらはさ」、「誰だって忙しんだよ。おまえらだけじゃないんだよ」……。話の内容から、リポートと思ったものが、外人スタッフから来たメールをプリントアウトしたものだとわかった。
 同僚、しかも同じ女性だから気を許してこんな言葉を口にしたのかもしれない。が、私はそのとき「狭い意味での有能だな」という思いを抱いた。

 ぜひ先生方には、広い意味での「有能」な生徒を育てていただきたいとお願いしたい。

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「安田研通信」2011年2月上旬号

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