長編学校ガイド
 
恵泉女学園中学校 東京都 女子校
今こそ「内発性」を育てたい

■「闇」を見つめられる教師を採用

「自分のもっとも弱い部分は何だと思いますか?」――恵泉は、教師を採用するに当たってこんな「問いかけ」をする。自分の中の「闇」をどれだけ見つめているか、そしてそれをどれだけ説明できるかをみるためだ。自分を吟味する力がないと、生徒を理解できないからだ。ていのいい模範解答を返す人は採用しない。自分自身の言葉ではない模範解答をいう教師では、生徒の心を開けないからである。
 担当教科の学力はもちろんのこと、何より「人と向き合う姿勢」を重視する恵泉の採用のあり方は、いろんな場面に一貫している。

■ 心を安心して「開ける」教育風土

 いま子供たちは、「本当の自分は心の奥深くにいて」、「外側の自分が親、友達、先生に合わせている」。一見明るい子も、一生懸命相手に合わせている。「思春期」はまさにその内と外の折り合いをつけることに苦しむ時期にほかならない。
 恵泉には毎朝25分の礼拝があるが、うち週1回は「感話」を述べる礼拝。友達の前で、内面にある思いを言葉にする。「こんなことを語っても、みんなマジメに聞いてくれる」「暗い部分を出しても大丈夫」……そうした経験が、「私は私であっていい」という「拠り所」を心に生み、安心して心を開ける恵泉の精神風土を作っている。

■正解ではなく問いを教える

 恵泉教育は、教科指導においても、「正解」を教えることにとどまらず、問いがいのある「問い」を教えようとする。「結果」を強制していく教育ではなく、深い「原因」を与えていく教育。「させられる勉強」ではなく、「する勉強」。そのために、「ほんもの」や「事実」に直接触れる機会をたくさん用意している。実験、実体験、自然観察、芸術鑑賞、福祉・平和教育……。
 決して広くはないグラウンドの半分を畑にしてまで行っている「園芸」の授業も、そのひとつである。植物を育てることで、自分の思い通りにならない対象があることを知り、そのものの持っている法則性を知る。そうした体験が、アカデミックな真理探究の感覚を育てることにつながっていく。

■「恵泉出身者はすぐにわかる」

 創立以来の私服の伝統。「個」として独立した女性を送り出そうとしてきた校風。大学に進んだとき、恵泉生は「あなたはもしかして恵泉出身?」とよくいわれるという。自分の言葉で意見を主張し、「ごめん、今日図書館に寄っていくから」と、ひとりになることも恐れないからである。恵泉は、子供の課題をきちんと見つめ、深いところで解決しようとしている学校である。

(「学研くるみの木Vol1掲載) 




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